ストーリーSTORY
「4人のあいだで」
20年ぶりに連絡を取り合った大学時代の同級生で、元演劇サークルの 40 代の男女。専業主婦となり、コロナ禍で自宅に入り浸っている夫と息子を持て余しているナナエ(菜葉菜)。事務職をしながらパートナーと暮らすフサエ(占部房子)。貧しいながらも役者を続けている男・コウジ(草野康太)。 彼らの人生に影を落とす不在の女優・サヨコ。不在の女性の存在が、見えないコロナのように広がり、3人の中に秘められた思いを呼び覚ます。
「ワタシを見ている誰か」
フードデリバリーのバイトをしている写真家のカズヤ(好井まさお)。ある晩、マンションに食事の配達に行くと、リモートワーク中の 30代後半の OL・メイ(菜葉菜)が出てくる。自分は食べられないから、カズヤに注文した食事を食べてくれと泣きながら言うメイ。仕方なく玄関先で食べるカズヤ。何度かそのような注文が繰り返され、ある晩、カズヤはメイのマンションの部屋に招かれる‥。コロナ禍という状況だからこそ出会った二人の男女の物語。
「ゴーストさん」
20 代後半の風俗嬢のサチ(菜葉菜)。毎晩、帰宅する帰り道のバス停にいる 60 代のホームレスの女性・ カヨコ(浅田美代子)を、密かに「ゴーストさん」と呼んでいる。ある晩、ふとしたきっかけからカヨコと話すことになるサチ。かつて同じ夢を持っていた二人の女たちは、お互いの中に一時の救いを見出す。しかしそれは無残に打ち砕かれる。実話を元に、コロナ禍で経済的にも精神的にも追い詰められた女たちの姿を描く。
「だましてください、やさしいことばで」
40 代前半の盲目の女性・トモコ(菜葉菜)。足の悪い母と暮らす彼女の元に、弟の同僚だという青年・タケオ(上村侑)が現れる。弟が急に体調が悪くなり、入院することになったから、トモコにお金を工面してくれと訪ねてくるタケオ。金を騙し取ろうとしたタケオは、トモコから思いがけない贈り物をもらう事になる‥。
2020年11月、コロナ禍で職を失くし、ホームレスになった60代の女性が殺された。その衝撃は、すべての世代の女性たちを震撼させた。「彼女は私だ!」と声を上げ、当時の政権が掲げる「自助・共助・公助」に疑問を唱える女たちがたくさんいた。
私は緊急事態宣言が発令された当初から、コロナ禍がもたらした孤独、そして人のつながりについてずっと考えてきた。社会がさらに不安定になり、孤独になっていく中で生きる様々な世代の女たちを描きたいと考えた。
一人の女優がさまざまな女性たちを演じることで、立場、世代がちがっても同じ思いを抱えた女たちの姿が、浮き彫りになるのではないかと考えている。